『土曜日の天使達』


社会福祉法人かがやき神戸 ぐりぃと
【土曜日の天使達】

 

2006年6月に、クラウンを通して障害者福祉の
啓発・理解を広めるために「土曜日の天使達」を結成。


☆ホームページ
http://www.kagayaki-kobe.jp/doyoubi/doyoubi.html


社会福祉法人かがやき神戸・ぐりぃと 
~ゆかいなクラウン「土曜日の天使達」~

「土曜日の天使達」は障害のあるメンバーで構成されたクラウン(道化師)のグループです。
2006年私たちはご縁があり、クラウン・すまいるさんこと白井博之氏にクラウニングの師事を受けることとなりました。クラウンとは、ピエロのこと?ぐらいの知識しかなかった私たちでしたがすまいるさんの愉快で楽しいクラウニング講座を通じて、障害のある利用者は元気にいきいきとなりました。

2006年7月神戸大丸前で初めて披露させていただいた以降、この8年間で約240回の公演をさせていただきました。現在「土曜日の天使達」は、クラウンを仕事として活動させていただいています。 
障害のあることはクラウンではハンデーではありません。彼らだからこそ出来るクラウンがあるからです。メンバーの普段のやさしさ・元気さ・楽しさがパフォーマンスに表れ、多くのひとの心をなごませます。 
     
 私たち、障害のある人達にとっては、クラウンで多くの方たちの前でパフォーマンスをさせていただくことだけが大切なのではなく、練習や活動そのものが利用者の支援につながります。 
*準備体操で心身のリラックス(変な顔できます!)    
*パフォーマンスでアイコンタクトや息を合わせることの大切さをまなびます。
*集団練習で協調性を培い仲間とともに作りあげる楽しさを実感します。 
*グリーティングは、おもてなしの心をまなびます。(コミュニケーションの基本) 
 障害のある人達には、苦手なことがたくさんあります。話しをすることが難しかったり、相手が何をしたいのか汲み取ることが苦手だったり、コミュニケーションが不得意な人もいます。そんなメンバーにとってクラウニングは目でみて体験する、とても分かりやすい取り組みです。私たちはそんな活動を通して、かがやき神戸の「土曜日の天使達」だからこそできるクラウンを白井先生とともに目指しています。 
   
社会福祉法人かがやき神戸の概要      
社会福祉法人かがやき神戸は、神戸市北区と西区にある、障害のある人への作業や仕事の支援、生活の場(ケアホームなど)提供、また相談事業など現在11事業を行っており、約300名の方が登録して利用されています。 
ゆかいなクラウン「土曜日の天使達」
~笑う喜び・笑ってもらう楽しみ~

         兵庫県・社会福祉法人かがやき神戸 ぐりぃと
                      事業責任者 山本喜代己

【はじめに】
 薄暗く暗転した舞台、そろ~り・そろ~りスローモーションで5人のクラウン(道化師)が登場。「ここはどこ?」「どこに迷い込んだんだろう・・」と不安そうな表情・・・突然場面が明るくなり軽快なテンポで愉快に元気に踊りだすクラウン。4月30日神戸市内のうはらホールでの第2部の冒頭シーンです。カラフルな衣装に、個性を活かした派手なメイク。みんな障害は様々ですが、誰もが愉快で元気な仲間たちです。
クラウン(道化)のチーム「土曜日の天使達」も結成されてこの6月には丸5年を迎えます。2006年7月、神戸大丸前で無謀(?)とも思える第1回目の公演から、今年4月までに153回の公演をさせていただいたことになります。その間本当にたくさんのところにいかせていただきました。今回のうはらホールでの公演は「めったにみられへん・SHOW part2」と題した自主公演の2回目です。昨年の12月から練習を開始し、この日の為に何十回と練習を重ねてきました。大きな舞台を経験するたびに、メンバーも一つまた一つと大きく成長してきました。会場約500名のお客様を前に、臆すること無くいきいきと演技するメンバーを見て、このクラウン活動をしてきてよかった!との思いが湧いてきます。

 クラウン活動の誕生は、2006年障害者自立支援法導入により福祉の方向性が大きく変わったことがきっかけでした。そのころは、法人運営に明日が見えず、不安な状況でしたが、通所される利用者の方々の為にも、なんとか苦境を超えていかなければなりませんでした。法人内に財政事業委員会を立ち上げ、運営面の安定をはかる一方、障害者福祉の啓発活動の一環として、障害のある人たちで構成されたクラウンチームをつくり活動をはじめました。
 
【クラウン(道化)てなあに?】
 クラウンとは道化師のことです。ほとんどの方は「ああ~!ピエロのことね」と言われます。確かにピエロもクラウンの一人であることには間違いはありません。クラウンの大きな特色は、そのクラウン一人一人がピエロと同じように一つのキャラクターであることです。11人のクラウンがいればピエロと同じように11のキャラクターが存在するのです。
 私たち障がいのあるメンバーがクラウンとして5年ものあいだ活動してこれたのは、単に道化師は演じるだけのことではなく、自分自身の長所・短所を含めてデフォルメしたキャラクターをつくることが出来たからだと思っています。クラウンとは、役を演じるのではなくそのままの自分を見せることなのかもしれません。背伸びをすることもカッコつけることもなく、その人の中にあるそのままをキャラクターとして活かすことにあるのです。
 障がいの重い軽いは問題ではありません。しいていえば、各々の持っている個性や面白さを、どのようにして活かすかによりクラウンとして十分存在感を発揮できるのです。

 
【内なる力】
 2006年活動を始めた当初は、約30名の参加者がありました。その中には、職員もいれば家族もボランティアのかたも交じってのサークル的な活動でした。当初はこのような活動は他に例がなく、さまざまな場所に出演させていただきました。関係機関はもとより、一般の企業の社会貢献の一環としてイベント等に呼んでいただきました。その頃のことを思い出すと、何とも申し訳ないような舞台だったにちがいありません。皆さまの温かい励ましと応援のなかで活動させていただいていたのだと感じています。
 でも、メンバーは着実に変化してきました。それまでは、通所してきてもなかなか仕事に意識が向かなかったり意欲がわいてこないメンバーが、休まず出勤しいきいきと活動し始めたのです。やりたいことが見つけられず、何にも興味を示さなかったメンバーが初めて自分から「やりたい」といいました。
 その力がどこからくるものなのか、このまま継続するものなのか、私たち職員も確信は持てませんでした。そのころには、実際に出演するメンバーは約10名程度に固定してきていました。出演させていただくとお礼としてお金をいただきます。それをメンバーに出演料としてお渡ししていく中で、「もっと責任を持った主体的な活動にする」ためには、これをかがやき神戸の利用者の福祉的就労として位置づけられないかと考えはじめました。
 そして、2008年社会福祉法人かがやき神戸の中の就労継続支援事業B型事業(事業所名ぐりぃと)として立ち上げ、神戸市北区谷上に拠点を構えクラウンを仕事として活動しています。
 
【障がいのある人の仕事】
 毎朝9:30分メンバーが順次出勤してきます。よほどの事が無い限りほとんどのメンバーは休むことはありません。朝の会を10:00に行い今日のスケジュールを確認します。クラウン出演料だけでは彼らの給料を保障することはできないので、自主製品づくりや地域の請負いの清掃作業などをこなします。
 午後はほぼ毎日クラウンの練習を行い、月に4回プロのクラウン講師の直接練習を受けます。昨年は年間約35回程度出演してきました。出演の依頼があると講師に相談をしながら演目の内容をみんなで相談して決めます。今回はどのようなイベントでどのようなお客さんか、舞台の広さは?音響は?など一つ一つ確認し、ニーズに合わせて出演メンバーを決めます。呼んでいただいた主催者の思いや、子供たちが多いかどうかなども考慮します。
 メンバーの中には、相談や会議が少し苦手で難しいメンバーもいます。でも誰もが参加しみんなで決めていくのが、私たちの大切にしている事の一つでもあります。ときには調子が悪い時があったりしてトラブルも起こります。でも、どんなときもみんなで頭を突き合わせて考えると不思議と答えが見つかるものです。

【チーム力】
 現在、クラウン「土曜日の天使達」として活動しているのは11名で障がい種別もさまざまです。出演はイベントの規模や場所によっても異なり5~6名で出演することもありますし、全員参加のときもあります。
 クラウン活動を仕事として取り組んできたことには、単にクラウンが上手くなることだけを目標にしたわけではありません。クラウンという仕事を通じてコミュニケーションの基本や協調性・責任感を培い、社会参加を目指しています。
 「時間を守る」「挨拶をする」「仕事に責任を持つ」は、一人ではがんばれないかもしれません。でも、仲間がいることで互いに刺激し合い、いつの間にか力がついていることがたくさんあります。「土曜日の天使達」に所属しチームの一員として活動し、それぞれが必要な存在であると認められている。そんな中で「みんなに負けていられない」と小さなライバル意識も芽生えてきています。
【障がいがあったって目立ちたいし、ひとを笑わせたい】
 障がいのある人の仕事として「クラウン」は今まで前例のない活動だと思います。でも、こんな仕事があってもいいんじゃないかと思います。確かにクラウン活動でメンバーが満足できるお給料はまだ払えていません。それを補うためには、他の仕事もしています。でも、プロで活動されている大道芸のパフォーマーも同じです。すべての人が、これで生活出来ているわけではありません。みなさんアルバイト等もしています。でも、やっぱりこの仕事が好きなのです。
たくさんの人の前で活躍したいし、たくさんのひとを笑わせたい!障害があってもそんな仕事があってもいいんじゃないですか? 仕事だからこそ頑張れる・努力も出来る。
 「障がいのある人の仕事はこれ!」って決めてしまわない。
 好きな仕事に出会えた「土曜日の天使達」はとっても元気です!

 今年は、東日本大震災が起こりました。甚大な被害にこころが痛みます。日本中が落ち込み、イベントの取りやめ・縮小の声を聞きます。例年約30回以上させていただいてきたクラウンの公演も今年は少なくなることも予測されます。でも、こんなときにも、いえ、こんなときだからこそ、私たち「土曜日の天使達」は、いつも以上に明るく愉快で元気です。これからも神戸からクラウンを発信していきたい!そして神戸から元気を送りたいのです。